「男性的傾向」と「女性的傾向」を考慮したマネジメントアプローチ

昨今、マネジメントの大きな課題の一つとして、女性の管理職への登用など女性活躍をどう進めるか、が注目されている。しかしながら、実際の企業の現場では、「男性的傾向」と「女性的傾向」の違いにより、コミュニケーションの問題が発生して思い通りに進まないとの報告がある。

 

当研究所においてこれまで蓄積してきた実際の男女管理職の分析データをもとに、男性と女性の違いを分析した結果をご紹介する。この分析結果も参考に、相手のタイプ傾向を見極め、対応方法に工夫を加えることで、管理職を含む男女間のコミュニケーション、「男性的傾向」をもつ人と「女性的傾向」をもつ人への対応をより円滑にすることができる。


1. 脳科学に基づく男女の脳の平均的な傾向


(1)脳梁の太さ

   女性の方がやや太い傾向、左右の脳を連携して使いやすいとされる

(2)偏桃体や海馬の活動の違い

   感情処理や仕組みの差がある

(3)空間認知能力と共感力

   男性は空間把握能力が、女性は他者の感情を読む力が優位になる傾向

*これらは統計的な傾向、脳の性差は可塑的(変化可能)であり、生まれつきの構造だけでなく、学習や環境の影響が非常に大きいことが報告されている。


2. 日常に見られる思考や行動の一般的な傾向

活用の概要


(1)「男性的な傾向」

   状況を客観的に分析、早く結論を出して解決しようとする。

   論理的思考を重視、感情を表に出さず、課題に効率的に対応する。

(2)「女性的な傾向」

   相手の気持ちや背景に目を向け、共感や関係性の維持を大切にする。

   すぐに結論を出さず、感情を共有しながら理解を深めることに重点をおく。


3. マネジメント分野での分析


(1)国内と海外との違い

国内事業では、日本的な男性と女性の脳の傾向の違いを感じることが少なくないが、海外事業において特に外国人については、男性と女性の脳の傾向の違いを感じたことはあまりないというビジネスパーソンも多い。

 

(2)マネジメント研究会での分析

企業の上級マネジメント職によるマネジメント研究会での分析結果は、以下のとおりである。

*ただし、傾向を知ることは重要であるが、最終的には個人毎の分析結果を見て対応する必要があることをあらかじめ付言する。

① 気質タイプ

男性ではⅢ型が36%と多いが、女性ではⅢ型は8%と少なく、明らかに差がある。論理的思考が影響か。

(→女性では論理的・戦略的思考よりも、感情的思考が多い傾向がある)

 

② Stretch-Focus(拡散的―集中(収束)的思考)

両者ともばらついているが、平均を見ると、男性0.16、女性0.25、と女性の方が、拡散的思考が強い傾向がある。

(→女性では拡散的思考の方が強く、思考が広範囲に広がる傾向がある)

 

③ 生き甲斐度

男性0.62、女性0.55であり、女性の方が低い傾向がある。

(→女性では生き甲斐度がやや低く、企業内・家庭内などで課題を相対的に多く感じている可能性がある)

 

《参考データ:上級マネジメント職によるマネジメント研究会での分析結果》

(3)対応のポイント

「男性的な脳」「女性的な脳」という表現は、男女で脳の働き方や考え方に違いがあるという傾向をあらわす表現だが、男女の脳の使い方や能力には重なりが多く、性別よりも個人の経験や環境が大きな影響を与えるという他の研究結果もある。上記(2)でも示したとおり、気質分析においても、ある程度の傾向は見られるが絶対的なものではない。

 

上記を前提としつつ、分析結果を踏まえ、当研究所ではいわゆる「男性的な脳」=「目的・結論重視タイプ」、「女性的な脳」=「共感・プロセス重視タイプ」と便宜的に分類し、タイプ別の特徴と対応方法を以下に記す。なお、多くの人は両方の特性をバランスよく持っているため、「どちらかというと◯◯タイプ寄り」という表現がより適切であろう。いずれにしても、相手のタイプ傾向を見極め、対応方法を工夫することで人間関係がより円滑になる。


<タイプ別の特徴>

  相手が目的・結論重視タイプの場合 相手が共感・プロセス重視タイプの場合
会話スタイル 結論や事実を先に伝える。効率の良いやり取りを重視する 気持ちの共有や流れを重視し、話の内容よりも「共感されること」に安心感を覚える
感情の表現方法 外に出さずに冷静に対応しようとする 言葉で適切に表現して伝える
物事の進め方 一人で進めたい チームで協力して進めたい
問題が起きた時 すぐに解決策を考える まず背景や相手の気持ちを考える
やりがいの感じ方 明確な目標を設定し、できるだけ効率よく最短距離で結果を出すことでやりがいを感じる まず「なぜそれが必要か」「誰のために行うのか」を知り、チーム内の意見を尊重しながら対話をして、協力しながら目標を達成していくプロセスによってやりがいを感じる

<タイプ別効果的な対応方法>

  相手が目的・結論重視タイプの場合 相手が共感・プロセス重視タイプの場合
説明する時 結論を先に言う 背景や共感も含めて順を追って説明する
フィードバックする時 改善点をストレートに伝える 努力のプロセスや気持ちを認めた上で、適切な表現で伝える